お早うございます。
第19話完結しました!
沢山のコメント大変ありがたく読ませて頂いております。
そしたら今日、こんなコメントが・・・

!?>[899] ふと思ったけど、十段先生は生首があると調子がよくなるのかな? <2013/03/14 08:56:06> aWAaOoK0P!!?これは衝撃のコメントでした・・・。
今まで全く意識したこと無かったのですが、
言われてみればそうかも知れない。たぶん、コメントをして下さった方は
生首が出た今回の更新が早かったことや、
ブログで「今回は調子が良い」とか言ってたのを見て下さっていて
軽い気持ちでこういうコメントをしてくれたのだと思うのですが、
これはマンガを描くにあたって
モチベーションの維持が死活問題になる作者にとっては
かなり衝撃的なコメントでした俺はもしかしたら、生首を描けば調子が出てくるのかも知れない・・・
そう思ったら、実際に考察しないわけにはいかなくなっていました。
↓以下考察
【序】 今回頂いた、「ふと思ったけど、十段先生は生首があると調子がよくなるのかな?」
というコメントに対し、実際に生首を描いた回の作者の調子を調べることにより、
今後の作品更新に対するモチベーションの維持、並びに向上を図るものである。
【本】1.生首を描くということ
「カンニング・スタンツ」は中国古代の戦乱期である秦末漢初の時代に取材した作品であり、
その為、戦死或いは刑死した登場人物が生首となって描写されるシーンが多々存在する。
生首を描写することにより、以下の事項を効率的に表現することが可能である。
・「この人は死にました」という事実
→「自分の意志や天命ではなく、他者により首を斬られるという状況で命を失った」ということの表現。
・生首となった者が敗者であり、それを保有する者が勝者であるという関係性
→「誰と誰が敵対していたのか」「どちらが勝利したのか」ということを明示できる。
・作品背景の残虐的、非日常的な雰囲気
→作品の舞台が血も涙もない戦乱の時代であること。人命の軽さ、栄枯盛衰の儚さを効果的に表す。
・性急な場面転換、時間推移
→さっきまで生きていた人間を、生首で表現することにより一コマで死者とすることができる。
一足先がどうなるか分からない緊張感・逼迫感を表す。
また、漫画としての効果以外に、以下の様な利点がある。
・作者がバストアップの描写に慣れている(四肢が描けない)ため、生首だけを描くのは比較的楽である。
・生首は表情に乏しく生命感も欠如しているため、多少適当に描いてもそれっぽく見える(気がする)。
・人物を殺すことにより、多すぎる登場人物の排除・退場となりインフレ緩和につながる。
・人物の死によって物語を次のステージに進められるため、なかなか進展しないこの漫画の光明となる。
ちなみに読者の方の中には「生首のようなグロテスクな表現が好きなのではないか」と
思われる方もいらっしゃるかもしれないが、作者にそういった趣向は特にない。
あくまで漫画的表現として生首を描いているだけであり、
それ以上の感情は皆無であるということを理解頂きたい。
さて、ざっと思いつくだけでもこれだけの利点があった。
これだけで「生首最高だぜ!」と言いたくもなるが、結論を出すのは一旦待ち、
これを踏まえた上で実際に漫画と照らしあわせた考察を実施してみたい。
2.生首の有無によるモチベーションの考察
上記の考察を踏まえ、実際に漫画の回ごとに生首描写の有無を調べ、
その回を描いていた当時の作者のモチベーションと比較することで、
数値として「作者は生首があると調子が良くなるのか」を検証する。
なお、モチベーションは5段階評価とし、評価基準は現在の作者の記憶とする。
・第一話 「 刺客 」生首描写なし 作者の調子「2」
記念すべき初回に生首という物騒なものがなくて一安心である。
作者の調子が低いのは、単純に漫画を描き慣れておらず、
動きのないオッサンを描くのが精神的にも技術的にも苦痛であったからである。
こんな調子で連載していけるのかと非常に不安になった思い出がある。
・プロローグ生首描写あり 作者の調子「3」

生首初登場である。無名の兵士と項燕将軍の首が登場。
少ないページなので、漫画を描くのは苦痛だったが比較的さっさと終わらせた印象がある回。
やはり少ないページで色々と表現するには生首は効果的だと感じる。
ちなみにこの回の文章は全てボトムズからの流用である。ひどいものだ。
・第二話 「 沛 」生首描写あり 作者の調子「4」

この回は生首は出てないはず・・・と思ったらあった。
項燕将軍が回想で登場していた。
この回からようやくストーリー性を持った話や動きのある人物が描けたので、
結構テンションが高かったと記憶している。恐らく生首は関係ない。
読者の方の反応も「ハードボイルドだ」「渋い」等々好評であった。
初期では一番気に入っている回である。
・第三話 「 出会い 」生首描写なし 作者の調子「2」
この回は説明回みたいな感じになったので、ちょっと迷走した感がある。
新登場のキャラも紀信と盧綰という、今となってはここで出すべきだったのかさえ
疑われるような地味キャラであり、この回自体も地味である。
生首がないのもそう感じさせる一因なのかもしれない。
・第四話 「 股夫 」生首描写なし 作者の調子「4」
現在までお世話になっているフリーソフト「AzpPinter」と出会った回。
ソフトの質が良いためか、韓信や始皇帝という大物を初登場させることができたせいか、
この回は平和な雰囲気ながらも割りとサクサク描けた思い出がある。
・第五話 「 暗転 」生首描写なし 作者の調子「1」
物語が主人公から離れて、始皇帝周辺の陰謀を描かなければならなくなったため、
どうしても慌てたような説明文が多くなって書き進めるのに非常に時間がかかった。
この頃はペンタブに付属していたComicStudioかAzPainterのどちらを使おうか迷っていたが、
この回はページによって使うソフトがバラバラであったことからも、作者の心理が伺える。
・第六話 「 鴻鵠蜂起 」生首描写なし 作者の調子「3」
楚漢戦争の火付け役であり、項羽と劉邦を世に送り出す契機をつくった陳勝・呉広の乱を描いた回。
一大イベントを描いた回なのでテンションは高かったが、ComicStudioに浮気していたためか、
荒っぽいテンポの良さが出ずにイマイチな出来栄えになってしまった。(ソフトのせいにするな)
・第七話 「 鳴動 」生首描写あり 作者の調子「4」

陳勝・呉広の蜂起により各地で反乱が勃発し、
なんと前編だけで4つの生首描写を叩きだす「大生首時代」の幕開けとなった。
今まで生首描写のない回が続いただけに、この回の生首パレードは
「平和な時代は終了しますた」感を読者に伝えることに一役買ったのではなかろうか。
本格始動した陳勝や、黥布の初登場など、作者も描いてて楽しかった。
・第八話 「 項梁起つ 」生首描写あり 作者のテンション「3」

最後に会稽郡守の殷通が生首となって登場。
特に描いていた当時の印象はない。
・第九話 「 赤龍の子 」生首描写あり 作者の調子「3」

こちらは前回の項梁蜂起と対比させる形で劉邦蜂起を描いた回。
前回同様特に苦労した思い出も楽しかった記憶もない。
ただ一つ言いたいのは、星○監督ごめんなさいということである。
・第十話 「 簇生 」生首描写なし 作者の調子「3」
この回も説明回というか、谷間回というか、大して面白く無い回であった。
この回の前編更新後にコメントで
>[182] 字を減らせばいいと思うよ、モノローグとか読んでる人はあまりいない <2011/12/16 17:24:40> 6hp0iAI.Iというアドバイスを頂き、個人的にかなり目を開かされた思い出がある。
作者の力量不足のため今でもあまり改善できていないが、
なるべく読みやすい作品にしようと意識しだしたのはこのコメントを頂いた頃からである。
ただし実際に読みやすくなっているかはどうかは不明。
こういう説明回になってしまうと、物語の急転を告げる象徴たる生首は
登場する余地がないのだということが分かる。
・第十一話 「 亡霊 」生首描写なし 作者の調子「4」
この回の前に「陳余と張耳」外伝があるが、今回の考察では外伝を除外する。
「生首描写なし」としたが、実は丙編のヒトコマに確認できる。

ただ、これはあまりにも分かりにくく、生首の描写を目的として
描いたものでもないので計上しないでおく。
生首から離れるが、この回は四編に分けて更新するという山場回であり、
かなり気合を入れて描いた思いがある。作画等が気合に追いついていない
点など多々あるが、序盤のキーパーソンたる章邯を颯爽と登場させたこともあり、
今でも思い出深い回である。
・第十二話 「 逆撃 」生首描写あり 作者の調子「5」

まず言っておきたいのは、この回を描いた時はなぜか絶好調だったということである。
話としては章邯がマイナー武将を倒しまくるだけの谷間回であったが、
なぜか作画もスラスラと進み、自分でいうのもなんだが話のテンポも良かったと思う。
そして堂々の生首4つである。
しかも全員マイナーとはいえ名のある人物。
この回で使用した
「前回までピンピンしていた人物がいきなり生首で登場」
「殺された素振りも見せずにいきなり生首で登場」
「戦闘の経緯等をぶっ飛ばしていきなり生首で登場」
「前のコマで生きていた人物が、次のコマ同じ表情のまま生首で登場」
などの表現技法は、手間のかかる戦争描写や殺陣シーンを省略することができる上、
場面に緊迫感をもたせることもできるので非常に気に入っている。
この回は「生首描けば物語が進む」という素晴らしい事実を
如実に証明してくれた画期的な回であった。サンキュー生首。
・第十三話 「 騎兵二人 」生首描写なし 作者の調子「2」
何があったか忘れたが、この回を更新するまでに2ヶ月ぐらい
間を開けてしまった。そんなこともあって、苦労した印象がある回。
主人公がシーブック灌嬰とおしゃべりするだけの回。
こういう進展のない回は描いてて辛い。
・第十四話 「 燕雀落暉 」生首描写なし 作者の調子「4」
ようやく陳勝を殺すことができたため、テンションは高かった。
そもそも「項羽と劉邦」の話は陳勝が死んでから幕が開けるような
ものなので、陳勝の死を描ききった時の達成感はなかなかのものだった。
12話同様、章邯無双の話ではあったが、対照的なことに生首はなかった。
・第十五話 「 軍師一人 」生首描写あり 作者の調子「4」

劉邦の故郷である豊の守備兵が生首となって晒されていた。
無名な人物でも生首として描写することで、読者に
「誰なんだろう?」と注目させることができる・・・かもしれない。
男ばかりの漫画に張良という女性的キャラクターを登場させた回であり、
そういう意味では転換期であったかもしれない。
・第十六話 「 北上 」生首描写なし 作者の調子「3」
季布と騎兵隊の描写が中心。
前にこのブログで述べた通りだが、この回イベントの順番を間違えており
それを強制的に突っ込んだためテンポが変になってしまった。
・第十七話 「 黥面 」生首描写あり 作者の調子「3」

項羽が凱旋した際に、討ち取った武将の首が登場。
非常に地味で小さなコマなので、生首として数えるか迷ったが、
項羽の強さ、手際の良さを表現するための描写だと考えて計上した。
・第十八話 「 会戦 」生首描写あり 作者の調子「2」

回想場面での陳勝の首と、秦嘉に斬り殺された部下の首が登場。
今までは生首となって晒されていたものばかりだったが、
今回は斬られた直後の半分生きてる生首が登場。
作者の生首描写に新たなる新風を起こした・・・かどうかは不明。
この回はページ配分を間違えて全四編にしてしまうなど、
調子自体は悪くなかったものの作品としてのテンポを失ってしまった
少し後悔の残る回であった。
・第十九話 「 戦局 」生首描写あり 作者の調子「4」

十二話同様調子の良かった今回。
ここでも生首の有効活用ができたと感じられる。
東陽甯君と秦嘉などは、今回で生首になるためだけに
登場したような感すらある。また、首を前にした項梁は
いかにも「勝者」というような雰囲気であり、
生首描写は厳酷な弱肉強食世界の象徴ともたりえるのだ。
3.生首登場回は本当に調子が良かったのか
さて、全19話の結果が出揃ったので、集計結果を纏めたい。
・結果
生首なし回 10回 作者の調子 平均「2.8」
生首あり回 10回 作者の調子 平均「3.5」
奇しくもあり、なし回が半分ずつに分かれ、
作者の調子も点数上においては差のつく結果となった。
【結】 今回の考察を通して、作者は生首が出ることによって調子が上がるのか否かを検証してみたが、確かに数値の上では差がはっきりと現れた。
また今回の調査に当たり、作品全話を回顧するという、読者の方にとっては非常にどうでもいいことを実施してみたのだが、作者としては作品と生首描写の関連性を改めて考察できたことで、少し新鮮な気分にもなれたと感じている。
こうやってみると、作者が生首によって調子を向上させているという結論に導きたくもなる。しかし集計作業を通して新たに分かったことがある。
それは、別に生首を描いたら作者の調子が上がるのではなくて、生首が頻出するようなスピーディーかつスリリングな展開になると、自然と作者の調子も上がってきて筆が進むということである。 これは何も、作者が生首大好きなシリアルキラーだと思われたくないために言っているのではない。作者は今回この記事を書くにあたって作品中の生首画像を蒐集しなければならなかったが、その作業はやはりなんとも言えず首筋が寒くなる感があった。もしこれが作者のヘタな絵でなく、もっとリアルな絵や写真であったら、もともと低血圧な作者は貧血でも起こしていたかもしれない。漫画内でひとコマふたコマ生首を描くだけなら別段なんとも思わないのだが・・・。

↑生首画像を集めたファイル。親とかに見られたらあらぬ誤解を受けそうである。
ここまで書いておいて結果がそれかと言いたくなる方もいらっしゃるかもしれないが、この結果は作者にとっては非常に有用なデータである。なぜかといえば、「生首」=つまり人の死の象徴を出すことが、物語を盛り上げる重要な要素たりえており、引いてはそれが作者の筆の進み具合に関係してくるということが分かったからである。
今後は今回の検証結果を踏まえ、一つ一つの描写が持つ意味や、そこに内在する可能性をよりよく理解し、それらを有効に活用したスリリングかつスピーディーな漫画が描けるように努力していきたい。
しかしながら、今の作者の脳裏を占めているのは考察結果や次回以降への展望ではなく、ゲシュタルト崩壊しながらチラつく「生首」の文字だけである・・・。
甚だまとまりのない内容になってしまったが、今回貴重なブログネタを提供して頂いたコメント番号899氏に感謝の意を表し、この身も蓋もない考察の〆とさせて頂きたい。